Research Abstract |
インターネットの通信需要と消費電力の増大に対応するため,光情報処理機能をワンチップに集積したフォトニックルータが提案され,その構成要素となるデバイスが研究されている.キーデバイスの一つである波長変換デバイスについて,非線形光学効果をその原理としたものは超高速応答が可能なため有力な候補の一つとなっているが,材料の非線形性が限られているため長尺なデバイス長や高パワー動作が課題となり,集積化が困難となっている.そこで,本研究では光非線形性の大きいカルコゲナイドガラス(ChG)と,フォトニック結晶導波路(PCW)のスローライトを組み合わせることにより,集積が可能なサイズで高効率な波長変換デバイスを実現することを目的とした. 昨年度までの研究において,ChG PCWの非線形特性は,Si細線導波路の79倍の効率で自己位相変調(SPM)を発生させながらも損失となる二光子吸収(TPA)は微少であるという結果を得ている.また,波長変換動作の実証として四光波混合(FWM)を発生させ,変換効率-21dBを示した. 今年度は,さらなる非線形増大を目指して低分散(LD)スローライト構造へPCWを最適化した. 解析結果をもとに作製したChG PCWは,真空中の光速の1/20程度のLDスローライトを10nm以上の波長帯域で示した.このLDスローライトを示す帯域に中心波長を持つ光短パルスを入射して非線形特性を評価したところ,Si細線導波路の200倍の効率でSPMを生じ,その効率を表す非線形パラメータγ_<eff>を求めると2.6×10^4W^<-1>m^<-1>で,これは我々の知る限り最も高い値である,一方でTPAは微少のままであることが確認された.FWMによる波長変換では,-14 dBの変換効率を示し,これはよく用いられるバルクのLiNbO_3デバイスに匹敵する値である.このことから,集積可能なサイズでの波長変換を実証できたと言える.より変換効率を増加させ,現在用いられている非線形ファイバに匹敵できるようにするためには,PCWの高次分散の抑制及び,FWMへの最適化が必要と考える.
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