2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J07654
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
高山 真 Keio University, 社会学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 記憶 / 語り / 言説 / ライフストーリー / カルチュラルスタディーズ / 被爆者 / 主体性 / 立場性 |
Research Abstract |
本年度は、昨年度にひきつづき、長崎において、被爆者への生活史聞取りを中心としたフィールドワークを実施し、その中間成果について日本社会学会および長崎大学主催によるシンポジウム「共生空間を生きる」において報告した。本研究課題は、被爆者の高齢化がすすむ現在、被爆の記憶を、体験世代から非体験世代へいかに継承するか、という問題を念頭に、継承の活動に取り組む被爆者への聞き取りを一次資料とし、ライフストーリー研究、カルチュラルスタディーズを中心とした社会学的方法により分析する点に意義がある。とりわけ、本年度は、被爆者の主体性という点に注目した調査および学会報告活動を行なった。この調査から明らかになったこととして、ロバートリフトンが広島での調査から明らかにした被爆者の心情に特有のアンヴィヴァレンス(二面性)の議論を、長崎の被爆者の語りに読み解いたことが挙げられる。それは、これまで行なわれてきた被爆者調査や、証言運動では明らかとなっていない「爆心地」の記憶に関して、被爆者はそのことを知りたい、そして社会的に記憶したいという欲望と、そのことを忘却したいという願望の間を揺れ動く存在である、という仮説である。昨年度の研究で明らかとなった「同心円イメージの権力と被爆者の語り」に関する議論を参照することにより、本年度明らかとなった問題の焦点をより明確にしていくことが、今後の研究課題であり、長崎における継続的な調査を実施するとともに、戦争の記憶に関する先行研究との関連についても検討していきたい。
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Research Products
(2 results)