2008 Fiscal Year Annual Research Report
多角的アプローチによる、咀嚼と嚥下に関与する高次脳機能の解明
Project/Area Number |
08J07784
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
関 伸一郎 Osaka University, 大学院・歯学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 解剖 / 脳 / 神経 / 中脳路核 / 大脳皮質 / 機能局在 |
Research Abstract |
ラットを用いて形態学的アプローチを行った。まず、咬筋神経刺激による逆行性電位を指標にして、三叉神経中脳路核を同定し、逆行性トレーサーであるFGを注入した。切片作成後、FG標識された細胞体の分布を観察した。FG標識された細胞体は、大脳皮質において、無顆粒皮質内側部、島皮質(特に不全顆粒性島皮質)、前頭前皮質腹内側部に認められた。次に、これら3つの大脳皮質部位に順行性トレーサーであるBDAを注入した。切片作成後、BDA標識された軸索終末の分布及びニュートラルレッドで染色した中脳路核ニューロンとの接合を観察、描画した。無穎粒皮質内側部への注入では、BDA標識された軸索終末は、中脳路核とその内側に、吻尾にわたり密に認められ、中脳路核ニューロンとの接合も吻尾にわたり認められた。不全顆粒性島皮質への注入では、中脳路核尾側部と結合腕傍核に密に、前頭前皮質腹内側部への注入では、中脳路核尾側部の背側部に密に、それぞれBDA標識された軸索終末が認められ、中脳路核ニューロンとの接合はともに核の吻側部に比べ尾側部により多く認められた。閉口筋筋紡錘支配の中脳路核ニューロンの細胞体は核の吻尾的全長にわたり存在し、歯根膜支配のものは核の尾側に局在することが知られており、これら2種の中脳路核ニューロンに対する、大脳皮質の異なる部位からの下行性投射の様態が明らかにされた。すなわち、運動の順序制御、協調に関与する無顆粒皮質内側部は、主に筋紡錘感覚を伝える中脳路核ニューロンを下行性に制御しており、味覚や舌の触圧覚情報を受ける不全顆粒性島皮質と、自律機能や情動に関与する前頭前皮質腹内側部は、主に歯根膜感覚を伝える中脳路核ニューロンを下行性に制御していることが明らかにされた。以上の如く、本年度の研究は、大脳皮質と三叉神経中脳路核を機能特異的に結びつける神経回路を同定したという点で重要な意義を持つと考えている。
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Research Products
(2 results)