2008 Fiscal Year Annual Research Report
言語性作動記憶における視覚的な長期記憶の関与-保持段階か検索段階か-
Project/Area Number |
08J07812
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
上野 泰治 Kyoto University, 教育学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 言語 / 記憶 / 視覚イメージ / 長期記憶 / 無関連視覚刺激 / 対連合記憶 / 系列記憶 / 記憶術 |
Research Abstract |
本研究は、言語の記憶がその事物の視覚的イメージによっていかに支えられているのかを明らかにすることを目的とした。その具体的手法(内容)及び意義としては、我々のイメージが知覚的、つまり絵のようなものかという点を、「無関連視覚刺激パラダイム」を用いて直接的に検討したことにある。特に、昨今注目を浴びているDynamic visual Noise(Quinn & McConnell,1996)という刺激は、より純粋に視覚処理にのみ影響を与え得る妨害刺激・パラダイムとして知られている。本研究はこのパラダイムを用いた研究をレヴューし、その視覚処理妨害効果が見られる言語記憶事態を明らかにする実験を実施することによって、当該の事態において視覚的イメージが働いていることを明らかにした。 レヴューから導かれた仮説を実験において検証した結果、二つの単語を対にして記憶し、一方を手がかりとしてもう一方を思い出すという対連合記憶を求めた際には、視覚イメージが働いていることが示唆された。一方、単語を順番に覚え、その順序を守ったまま思い出す系列記憶を求めた場合には、相対的に視覚イメージは優勢にならないことが示唆された。本研究の重要性としては、言語記憶術としての視覚イメージ利用性が効果的に働く学習環境を示唆している。これは、学習障害などの可能性をもった方々にも学習を促進し得るような、社会貢献的価値をもつ研究の基礎データになる可能性がある。また、学術的にも、無関連視覚刺激パラダイムが効果をもつ条件をレヴュー、整理することに寄与しており、今後の言語研究における本パラダイムの有用性を示唆する基礎データとなっている。本研究は既に論文として書き上げられており、今後、言語プロセスにおける視覚的イメージの役割、性質を明らかにする研究を促進し得ることが期待される。
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Research Products
(1 results)