2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J07834
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山本 英司 Nagoya University, 大学院・生命農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 生殖隔離 / 雑種崩壊 / 植物耐病性 |
Research Abstract |
生殖隔離現象のうち、雑種F1個体は生育も稔性もほぼ正常であるのに、F2以降の世代で個体の致死、弱勢もしくは不稔が生じる現象を雑種崩壊という。本研究では、コシヒカリの遺伝的背景にハバタキの染色体断片を導入したNILを作成する過程で、分げつ数、草丈、着粒数などの減少をともなう雑種崩壊が見いだされたため、これについて遺伝学的な解析を行ってきた。その結果、今回の雑種崩壊は第2染色体長腕に座乗するhbd2遺伝子がハバタキ型ホモ、第11染色体に座乗するhbd3という遺伝子がコシヒカリ型ホモとなった場合に発生することが明らかとなった。hbd2については、すでにCasein Kinase Iが原因遺伝子であることを特定している。hbd3についても同様に遺伝子単離に向けた作業を進めた結果、植物において耐病性に関わることが知られるNBS-LRR遺伝子がクラスターを形成している領域に特定された。この結果から、今回の雑種崩壊について植物耐病性との関連性が示唆された。今後は、今回の雑種崩壊と植物耐病性との関連について、遺伝子発現解析などから明らかにしていくとともに、クラスターを形成しているNBS-LRRのうち、どれがhbd3原因遺伝子なのかについて、hbd2の原因遺伝子であるCasein Kinase Iとの酵母ツー・ハイブリッド法を用いたスクリーニングを用いて特定を試みる予定である。また、Casein Kinase Iが、本来どのような機能を担っている遺伝子なのか、またどのようなメカニズムで今回の雑種崩壊を引き起こしているのかについて、アンチセンス系統や、ドミナント・ネガティブ系統を作出・解析することによって明らかとしていく予定である。最後に、今回の雑種崩壊に関わる遺伝子がイネという種内においてどの程度の広がりを見せているのかについても解析を行い、これらの遺伝子のイネ種分化における意義を考察したいと考えている。hbd2については、様々なイネ品種を用いた調査の結果、インドネシアの在来品種であるPetaから由来し、これを母本としたいくつかの近代品種の間に伝播していることが明らかとなったが、同様の解析をHbd3についても行い、今回の雑種崩壊のイネ種分化における意義の考察を試みる予定である。
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