2008 Fiscal Year Annual Research Report
神経疾患への運動効果と環境による影響〜タンパク質品質管理の視点から〜
Project/Area Number |
08J07869
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小黒 麻美 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 運動 / 環境 / 精神神経疾患 / タンパク質品質管理 |
Research Abstract |
<研究の背景と目的>神経細胞にとって細胞数以上に重要なのは神経突起の数である。神経突起は、記憶に必要なネットワークを作ることなどに必要であり、歳をとると神経細胞の突起の数が減少することが知られている。最近の論文によるとアルツハイマー病の原因とされるβアミロイドの脳への蓄積を遺伝的に起こし易く改変したモデルマウスをおもちゃや回転ケージをいれた豊かな環境のケージに入れて遊ばせるとβアミロイドの蓄積が大幅に減ったという報告がある(Lazarov et al.Cell,2005)。このモデル実験は遺伝的に痴呆を起こし易い場合でもライフスタイルによってそれを軽減できる可能性を示している。このことから我々は、1)プロテアソーム阻害に関わるタンパク質の分解系での役割を明らかにし、各強度の運動での発現と比較すること2)様々な環境要因が神経突起の数に関係しているのかを検討することの2点を中心に解析し、運動療法やライフスタイルの確立を目指していく予定である。 <研究進行状況>一年目である今年度は、アメリカ・カリフォルニア大学ロサンゼルス校にて、共同研究者であるDan Geschwind教授の指導の下、研究計画書の予定通り、DNAマイクロアレイを用いてアルツハイマー病や自閉症における原因遺伝子の同定するスクリーニング研究を進めた。今回のスクリーニングでは、脆弱性X症候群と15番染色体重複患者のリンパ芽球の細胞を用いて、遺伝子をゲノムワイドに調べたところ、いくつかの候補遺伝子を特定することができた。その中の候補遺伝子であるCYFIP1を過剰発現させた細胞を観察すると、神経突起が減少することが突き止めらた。これは上記に書いたとおり、神経突起成長に関わる重要なタンパク質の可能性が高い。そこで我々はBacトランスジェニックを用いて、CYFIP1を過剰発現させたマウスを作成した。現在はこのマウスの病理学的な脳の形態変化と、行動実験を行っている。この進度は予想よりも遥かに速いペースで行われており、現在は計画にあった3年目の研究に突入している。今後は、予定通りこのモデルマウスを用いて、どの程度の運動やライフスタイルが精神神経疾患の発症遅延や症状軽減につながるのかを検討するため、脳のタンパク質分解機構を見ると共に、神経突起伸長の観察を生化学的な手法を用いて検討する。
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Research Products
(2 results)