2008 Fiscal Year Annual Research Report
X線分析法を用いたイスラーム・ガラスの考古化学的研究
Project/Area Number |
08J07921
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
加藤 慎啓 Tokyo University of Science, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 考古化学 / 文化財科学 / イスラーム・ガラス / その場分析 / 蛍光X線分析 / 化学組成 / エジプト |
Research Abstract |
1.グラス・ウェイトの化学組成分析による組成編年の解明 約400点のグラス・ウェイト(銘文から製造年代が特定可能)に対して、高感度蛍光X線分析装置を用いることで、La,Ce,Ndといった希土類元素までの非破壊化学組成分析を実現した。これまで化学組成に関する研究例が少なかったが、本手法により、エジプトを中心とする詳細なガラス組成変容が解明された。 2.イスラーム時代植物灰ガラスのエジプトにおけるその場分析(9-12c.) 8-9月の約2ヶ月間エジプトに滞在して、9-12世紀のガラスの化学組成分析を行った。化学組成および考古学的知見を総合することで、9世紀には、エジプト本土、シリア、メソポタミア地域からのガラスが搬入されていたことがわかり、当時の活発な交易の様相を科学的に実証した。 3.国内所蔵ガラスの多角的分析(フスタート出土、13-14c.エナメルガラス) エジプトの現地調査で不足する資料として、国内に所蔵されている13-14c.のエナメルガラスを様々な手法で分析評価した。例えば、表面に塗布されている顔料のXRFイメージングにより、微細部分の特性化・技術的解明に至った。具体的には、顔料のPb濃度が高い場合、その色は他に比べて低融点であり、2次的に彩画・焼結したものと推察される。 4.ビザンティン・ガラス分析調査(クロアチア、10-11c.) 中近東とヨーロッパ世界とのつながりを考察する目的で、イスラーム・ガラスと類似装飾をもつクロアチアのアドリア海沖沈没船から出土しかビザンティン・ガラスの現地調査を行った。微量元素組成はやや異なっており、技術の伝播は確認されたものの、原料は中近東とは異なる独自のものを使用していると判断される結果を得た。
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Research Products
(6 results)