2009 Fiscal Year Annual Research Report
X線分析法を用いたイスラーム・ガラスの考古化学的研究
Project/Area Number |
08J07921
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
加藤 慎啓 Tokyo University of Science, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 考古化学 / 文化財科学 / イスラーム・ガラス / その場分析 / 蛍光X線分析 / 化学組成 / エジプト |
Research Abstract |
1.ガラス原料塊のオンサイト分析によるエジプトのガラス製造の実証(エジプト・フスタート出土) ガラス製造工程で生じるガラスの塊や屑などは、その地でガラス製造が行なわれていたことを実証する物質である。こうしたガラスの塊や屑を化学分析し、これまでに蓄積したイスラーム・ガラスの組成変遷モデルに当てはめることで、その地でガラス工房が稼動していたおよその時代や、ガラスの原料などを判断することが出来ると考えられる。イスラーム時代(7-15世紀)のエジプトでは、こうした資料の化学組成分析が十分ではなく、ガラス製造に関して未解明の点が多く残っている。そこで、カイロ近郊のフスタート遺跡から出土したガラスの塊や屑を現地で分析することで、その実証的研究を行った。その結果、8-9世紀にかけて既に、この地でガラス製造が行なわれていたことを初めて明らかにし、イスラーム・ガラス史にとって重要な知見を得た。 2.国内所蔵ガラスの多角的分析(フスタート出土、13-14c.エナメル彩ガラス) 13-14世紀に位置づけられるエナメル彩ガラスは、エジプトまたはシリアで作られたとされる。その高い装飾技術は注目されており、近代の工芸にも影響を与えているが、その物質科学的なデータが不足している。そこで、国内の博物館や美術館に所蔵されている資料に対して、蛍光X線分析やラマン分光分析などを用いることで、非破壊でエナメル顔料の同定やガラスの組成分析を行った。赤ではヘマタイト、黄色には錫酸鉛といった顔料が用いられていた。特に、青色では、ラズライトとコバルトの2種類が存在していることが明確となり、当時のガラス工芸技術の広がりを考察する上で重要な知見が得られた。
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Research Products
(7 results)