2008 Fiscal Year Annual Research Report
自閉症における対人相互作用障害と皮質-扁桃体の機能的結合との関係の解明
Project/Area Number |
08J07939
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
魚野 翔太 Kyoto University, 教育学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | アスペルガー障害 / 広汎性発達障害 / 自閉性障害 / 視線 / 表情 / 対人相互作用 / 扁桃体 / 上側頭溝 |
Research Abstract |
本年度は主にアスペルガー障害おいて対人相互作用に重要な動的表情と視線の処理のどのような側面に問題があるかということについての研究を行った。アスペルガー障害では他者の視線方向への注意シフトが障害されていないが、定型発達でみられる動的表情によって視線による注意シフトが促進されるという現象はみられなかった。しかし、表情が静止画ではなく動的に呈示されるとより誇張した表情として知覚されるかどうかを調べたところ、定型発達群と同様にアスペルガー障害群でも動的な表情は実際よりもより強い表情として知覚されることが示された。以上の結果から、アスペルガー障害では動的表情や視線の知覚的な処理そのものに問題はないが、視線方向と動的表情の情報との統合が障害されていると考えられる。また、静止画表情を呈示して表情の弁別課題を行った場合には定型発達群と比較して表情認識の成績が低いことが示された。初期段階の知覚的処理ではなく認知的・情動的な処理に障害があると考えられる。これらの知見から、定型発達群での研究から明らかになった視線や表情の違いによって異なるふるまいをする脳波成分(N170)や特定の脳部位(上側頭溝・扁桃体)において定型発達者との違いが見られることが示唆される.現在は、今年度の研究で確立した心理実験のパラダイムを用いて視線や表情の処理に関わると考えられる上側頭溝や扁桃体の機能に焦点をあて、アスペルガー障害の持つ対人相互作用障害の基盤となる神経メカニズムを明らかにするための予備実験を行っているところである。
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