2009 Fiscal Year Annual Research Report
自閉症における対人相互作用障害と皮質-扁桃体の機能的結合との関係の解明
Project/Area Number |
08J07939
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
魚野 翔太 Kyoto University, 教育学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 自閉性障害 / アスペルガー障害 / 広汎性発達障害 / 表情 |
Research Abstract |
本年度は、広汎性発達障害(PDD)における表情知覚・認識についての包括的な研究を行った。静止画表情認識の先行研究の結果には矛盾があるため、参加者の年齢、顔認識能力、症状の影響に焦点をあてて表情認識能力との関係を調べた。その結果、PDD群において恐怖表情の認識障害があることが示された。定型発達群では年齢の増加によって表情認識・顔認識能力が向上したが、PDD群ではこのような関係が見られなかった。また、社会的障害の症状の程度が重い人ほど、恐怖表情の認識成績が悪かった。いくつかの要因が結果の矛盾に影響することが考えられるが、PDD群には恐怖表情の認識障害があることが示された。次に、PDD群の動的表情処理について調べる行動実験と神経科学研究を行った。前年度の研究から、定型発達群とPDD群において、表情が動的に呈示されると同じ強度の静止がよりも誇張した表情として知覚されることが示されている。しかし、この研究で用いられた表情は情動的表情の強いものであったため、より曖昧な表情の条件を加えた実験を行った。その結果、PDD群では表情強度が弱い場合に静止画と比較して動画表情の強度が誇張して知覚されないということが示された。この結果は、PDD群では他者の情動的シグナル増幅して知覚するメカニズムに障害があり、表情の小さな変化を敏感に感知することに障害があることを示唆している。また、動的表情処理の障害に関わる神経基盤を明らかにするために機能的核磁気共鳴画像法を用いた研究を行った。その結果、PDD群では定型発達群と比較して動的表情に対する運動情報・生物的な動作の処理に関わる脳部位や他者の意図・情動の処理に関わる脳部位の活動が弱いことが示された。この結果から、PDD群では動的表情からの他者の情動を理解する過程だけでなく、比較的低次の視覚処理にも障害がある可能性が示唆される。
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[Journal Article]2010
Author(s)
佐藤弥、魚野翔太、鈴木直人
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Journal Title
イラストレクチャー認知神経科学―心理学と脳科学が解くこころの仕組み―(オーム社)
Pages: 197-214
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