2010 Fiscal Year Annual Research Report
マウス卵形成過程における発生能獲得の分子機構に関する研究
Project/Area Number |
08J07943
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井上 梓 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | Nucleoplasmin 2 / Nucleolus-like body / 精子クロマチン脱凝集 |
Research Abstract |
哺乳類の卵母細胞は成長過程で受精後の発生を遂行する能力(発生能)を獲得するが、その分子的実体はまったくわかっていない、本研究の目的は、卵子の発生能に関与する因子を同定し、発生能獲得の分子メカニズムを解明することである。発生能の実体を解明することは胚の発生能を高める方法の開発に貢献し、特に畜産や不妊治療の分野に多大な意義をもつもの思われる。 本研究では、哺乳類の卵にのみ存在し発生に必須であることが知られているものの、その構成成分や機能がまったくわかっていない核小体様構造体Nuclcolus-like body (NLB)に着目した.昨年度までにNLBの主要構成因子はNucleoplasmin 2 (NPM2)という初期発生に必須なタンパク質であることを、単離したNLBに対する質量分析により解明した。 今年度は初期発生におけるNPM2の機能解析を行った。NPM2ノックアウトマウスの受精卵を詳細に観察したところ、受精後卵内に侵入した精子クロマチンの脱凝集が遅延することがわかった。同様の表現型はNLBを顕微操作により除去した卵においても観察された。そしてその表現型はNPM2 mRNAの顕微注入により回復すること、recombinant NPM2タンパク質によりin vitroにおいて精子クロマチンを脱凝集できることを明らかにした。この成果は哺乳類において精子脱凝集関連因子を同定した初めての例であり、今後精子の脱凝集メカニズムのさらなる解明に繋がるだろう。
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