2009 Fiscal Year Annual Research Report
自然物の物理シミュレーションおよび大域照明を考慮した写実的レンダリング
Project/Area Number |
08J07968
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
楽 詠コウ The University of Tokyo, 大学院・情報理工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 雲のシミュレーション / 降雨 / 雲微物理 / 関与媒質のレンダリング / アダプティブ分割 / 高速化 / 不偏 |
Research Abstract |
昨年度中は、主として二つのテーマに取り組んだ。一つは、降雨を伴う雲のビジュアルシミュレーションであり、もう一つは、関与媒質の写実的なレンダリングである。これらについて、順次説明する。 屋外シーンの写実的な表現では、時刻や気象条件に伴って変化する空のアニメーションが重要である。こうした変化に富む空を表現には、前線などにおける雨雲の形成及び降雨に伴う雲のシミュレーションが重要である。CG分野の従来研究では、雨雲形成や降雨を考慮していないので、我々は降雨までシミュレーションできる物理モデルを、気象学や雲物理の分野から導入することを試みた。雲微物理に基づいて雲を構成する水滴粒子の変化を追跡することにより、空間中の水滴の個数や半径の分布を求めることができる。これによって、前線断面における雲の生成過程及び降雨を模擬することができた。 次に得られた水滴分布をもとに写実的な可視化を行うため、我々はモンテカルロ法に基づいて、光の多重散乱を考慮したレンダリングを試みた。しかし、従来の計算手法では、空のように規模が大きく、また大気と雲のように媒質の密度が大きく異なるシーンをレンダリングする場合、計算に要する時間が実用的でない。これに対して、我々はWoodcock trackingと呼ばれる手法を拡張して、300倍以上の高速化を達成した。我々の手法では、空間を媒質の分布に応じて自動的にアダプティブに分割し、媒質の密度分布に応じてサンプリングの密度を適応させることで高速化を図る。なお、我々のサンプリング法は統計的に不偏であることが証明できる。我々の手法によって、空のような大規模なシーンの写実的なレンダリングでも、単一のデスクトップPCを用いて一時間程度で計算できるようになった。さらに空のレンダリングに限らず、雲や炎のような一般的な関与媒質のレンダリングにも適用でき、いずれの場合も従来法より高速にレンダリングできる。
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