Research Abstract |
生物が日の長さ(日長)に反応して示す性質(光周性)の背景には概日時計の存在が古くから示されているがその関係性はわかっていない.光周性のモデル生物であるウズラは日長が延長されると性腺刺激ホルモンが分泌され,精巣が肥大する.鳥類においては,この現象のマスターコントロール遺伝子TSHBが同定され,後に哺乳類においても機能することが明らかになった(Nakaoら,Nature,2008.Onoら,PNAS,2008).そこで,私は近年急速に研究が進んでいるエピジェネティクスによる転写制御に着目し,短日条件の下で育てたウズラの日長を延長したときのピストンの翻訳後修飾の変化を組織学的もしくは生化学的な二つの方向性で調べ,光周性と概日時計との関係性を見いだそうとした.まず,短日条件もしくは長日条件に供したウズラの脳を凍結切片にし,抗ピストン修飾抗体により免疫組織化学を行った.その結果,鳥類の光周性中枢である視床下部内側基底部(MBH)において陽性細胞を検出できた.また,脳からMBHを採集し,ウェスタンブロットを行ったところ,ヒストンの修飾バンドを特異的に検出できた.さらに,長日条件を与えたウズラのピストンの翻訳後修飾を調べ,特異的に変化する時間帯を同定した.哺乳類では一日の特定の時刻に光パルスを与えた場合,概日時計の中枢SCNではヒストンH3のリン酸化が時計遺伝子mPer1の転写を促進することが報告されている(Crosioら.,Nat Neurosci,2000).この事実は,ウズラの光周性において,TSHBの発現制御にエピジェネティクスが関与している可能性を示している.よって,TSHBの上流領域でのクロマチン構造の変化をとらえるためにChIP解析の系の確立を進めた.また,バクテリアの概日時計による転写出力の新たなpathwayを明らかにした(TaniguchiとTakai., PNAS, 2010).
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