2008 Fiscal Year Annual Research Report
初期宇宙のバリオン数生成機構とその観測可能性に関する研究
Project/Area Number |
08J08004
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鎌田 耕平 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | インフレーション / 超対称標準模型 / 散逸 / 確率過程 |
Research Abstract |
宇宙に輻射が存在する場合、スカラー場の運動にはスカラー場から輻射へのエネルギーの散逸が重要な役割を果たしうることが知られている。当該年度、私は、アフレック=ダイン機構に散逸の効果を取り入れることを念頭に置き、アフレック=ダイン機構同様最小超対称標準模型を用いたインフレーション模型として近年注目を集めているMSSMインフレーション模型に散逸の効果がどのように効きうるかを解析した。MSSMインフレーション模型には、インフレーションを起こす場の値の領域が非常に小さく、初期条件のファイン・チューニングが非常にきついという問題点があるが、散逸の効果を取り入れた場合、この問題にどのような影響を与えるかは自明ではない。通常、散逸が重要な役割を果たすwarm inflationの解析においては散逸を引き起こす具体的な相互作用は手で入れているが、MSSMインフレーションにおいては場の相互作用はすべてわかっている。そのため、MSSMインフレーションにおいては散逸の効果を正しく評価することができ、その結果、MSSMインフレーションの初期条件のファイン・チューニングを緩和するという意味では、散逸の効果は有効ではないことがわかった。また、MSSMインフレーションの提唱者により、MSSMインフレーション以前にfalse vacuumインフレーションを起こすことによって、初期条件をチューンできるという解決案が示されていたが、私は、ストカスティックな方法を用いて詳しく解析することにより、false vacuumインフレーションによって初期条件のチューンはしうるが、チューンされる確率は非常に小さいことを示した。重要な点は、これによりインフレーションの初期条件のチューニングの機構には一定の制限がかかることがわかったことである。この結果を下に示す国内外の研究会にて発表した。また、論文も現在準備中である。
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Research Products
(8 results)