2010 Fiscal Year Annual Research Report
初期宇宙におけるバリオン数生成機構とその観測可能性に関する研究
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08J08004
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鎌田 耕平 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | バリオン非対称 / 重力波 / 熱場の理論 / インフレーション / 超対称の破れ / ヒッグス場 |
Research Abstract |
宇宙のバリオン非対称生成やインフレーションといった初期宇宙で起きた現象を理解するためには、素粒子模型に基づくシナリオを構築することが必要不可欠である。当該年度、私は、アフレック=ダイン機構の観測可能性にかかわる研究を中心に、素粒子模型に基づくさまざまな初期宇宙の現象の模型構築及び観測に関する研究を行った。まず、バリオン非対称生成に関連し、前年度に引き続き、有力なバリオン非対称生成機構であるアフレック=ダイン機構に付随するQボール生成時に発生する重力波の観測可能性に関する研究を進展させた。熱的ポテンシャルでQボールが生成される場合のQボールの進化を数値的に詳細に追い、ある条件下ではこれまで知られていなったthin-wall typeのQボールに変形することを示した。この場合の重力波の観測可能性も評価し、現在の宇宙のバリオン非対称を説明するパラメータではQボール生成時に発生する重力波は観測することがほぼ不可能であることを示した。次に、宇宙の構造形成の種を説明するうえで近年注目を集めているmodulated reheatingシナリオとアフレック=ダイン機構の整合性を調べた。この二つのシナリオは、現在の観測に抵触するくらい大きなバリオン等曲率揺らぎを生成してしまいやすく、相性が悪いと考えられていたが、熱的ポテンシャルでアフレック=ダイン機構が働く場合はバリオン等曲率揺らぎの生成を抑えることができ、首尾一貫したシナリオが描けることを示した。この模型は宇宙背景放射等の将来観測で検出可能なくらい大きなテンソル揺らぎとガウス統計からのずれを作り出すような宇宙の熱史を構築することが可能であるという点で非常に興味深い。整合性のとれたバリオン非対称生成のシナリオを構築するには素粒子模型に基づいた具体的なインフレーション模型を構築することが不可欠である。そのため、私は、上に述べた研究と並行して、そのようなインフレーション模型に関する研究を行った。具体的には。素粒子標準模型に現れるビッグス場や素粒子標準模型を超えた物理として期待される超対称模型に現れる場を用いたインフレーション模型を模型を構築し、そのシナリオの下での宇宙の熱史を明らかにした。これらの模型特有の観測的証拠の探索法やバリオン非対称生成機構をどう埋め込むかに関する研究が今後の課題である。
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Research Products
(12 results)