2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J08014
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
月山 幸志郎 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 殻模型 / 有効相互作用 / 不安定核 |
Research Abstract |
報告者(研究代表者)は、原子核殻模型の拡張として以下の2つの研究を行った。(1)陽子数、中性子数のバランスが大きく崩れ、粒子崩壊に対して不安定となるドリップ線近傍の原子核の微視的な記述。(2)現実的核子間相互作用から出発した殻模型の有効相互作用の系統的な導出。 (1)に関して、従来の殻模型では、有効相互作用に、連続状態との結合が取り込まれていない点を改善するため、1粒子状態に連続状態の自由度を含める、という拡張を行った。その手法として、(1A)実空間を離散化し、連続状態の1粒子状態を陽に取り入れた。1粒子の束縛状態に加え、共鳴状態、非共鳴の連続状態を全て取り込んだ殻模型計算を行った。有効ハミルトニアンを、連続状態を考慮しない場合に通常の束縛状態近似の殻模型の結果を再現するように決め、連続状態が、低励起状態にどのように影響しているかを調べた。その結果、ドリップ線近傍においても、連続状態の寄与は、エネルギー固有値に1MeV程度の補正を加えることを明らかにした。また、配意混合が依然として重要で、核子が粒子崩壊に対して不安定な系においても、核力を考慮することが重要である事を明らかにした。この結果を論文にまとめて提出した。また、(1B)Gamow殻模型にも取り組んだ(オスロ大学のMorten Hjorth-Jensen教授との共同研究)。Gamow殻模型はGamow基底と呼ばれる、複素運動量空間で定義される拡張された完全形を殻模型の基底として利用したものである。Gamow基底では1粒子共鳴状態や非共鳴の連続状態を数学的によく定義された状態として扱うことができる。この研究では、切り詰められた模型空間の核子が感じる有効相互作用を現実的核力から出発して、多体の摂動論を用いて求めた。この点は先行研究において、有効相互作用が、実験データへのフィットにより求められていた点と大きく異なる。ドリップ線近傍の原子核の低励起状態、基底状態を記述した。この点を論文にまとめて、現在投稿準備中である。連続状態にいる核子相関を核力に基づいて多角的に調べた意味は大きいと考えられる。 (2)に関して、報告者は、殻模型あるいは一般の多体問題における有効相互作用を系統的に導く方法を考察し、Similarity Renormalization Group(以下SRG)の方法を有限系に拡張した。
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Research Products
(9 results)