2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J08015
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
渡邉 慶 Kyoto University, こころの未来研究センター, 特別研究員(PD)
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Keywords | 神経生理学 / 前頭連合野 / 細胞外単一ニューロン活動記録 |
Research Abstract |
「意識・思考の座」と考えられている前頭連合野の神経活動が、我々の意識や心を反映しているのかどうか、反映しているのであれば、どのような神経メカニズムが関与しているのか?これを明らかにするために、1)「確信度評定を伴うBackward masking視覚刺激弁別課題」を作成し、ヒト被験者を対象に予備実験を行った。結果、視覚刺激が見えたかどうに関する確信の強さは、実験者が制御するマスク効果の強さと相関して現弱した。同時に、Continuous Flash Suppression(CFS)、及びChange detection課題、ノイズ条件下の視覚探索課題という3種類の手法を用いて同様の検討を行った。いずれの手法ともに、ヒト被験者に対して類似した結果が得られ、視覚刺激に対する被験者の主観的経験(見え)を制御できることが確認された。特に、ノイズ条件下の視覚探索課題は課題で求められる行動の単純さ、ターゲット検出(ターゲットの見え)難易度のコントロールのし易さから、動物実験に最も適した課題であることが確認された。2)提示された4つの視覚刺激の中からどの刺激を選択するか、という意思決定課題を用いて、2頭のサルから記録された単一ニユーロン活動を解析し、視覚刺激に対する前頭連合野ニューロンの応答とサルの思考過程の関係を検討した。結果、視覚刺激に応答する前頭連合野ニューロン活動には、単純な視覚応答だけでは説明できない成分が含まれていることが示唆された。通常、前頭連合野のニューロンは視覚刺激に対して約100msの潜時を持って一過性のバースト状の活動を示す。本研究の結果、提示された4つの視覚刺激の中からどれを選択するかというサルの判断によって、応答潜時が約50msの範囲で異なることが示された。ニューロンが早いタイミングの応答を示した場合には、サルがこのニューロンが好む方向へ提示された刺激を選択し、逆の場合はサルがニューロンの好まない方向への刺激を選択する、という傾向が示された。このニューロン活動は、サルの内的な思考過程と密接な関わりを持つことが示唆された。この結果に関しての論文を現在作成中である。
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