Research Abstract |
歯車は厳しい加工精度が要求されるだけでなく,トレーサブルな精度保証が要求される.歯形,歯すじ,ピッチは,歯車の主要な精度評価項目であり,その検査に用いられる歯車測定機の精度評価方法はISO18653に記述されている.このISOによると,校正されたマスター歯車,もしくは歯形基準器,歯すじ基準器,ピッチ基準器を参照標準として,トレーサビリティをとることが推奨されている.一方,産業界では最高等級精度の歯車をトレーサブルに評価するために,サブμmオーダの精度が保証された参照標準が要求されている.しかし,複雑な歯車形状に起因し,高精度な参照標準の製作,校正ができず,現状1μm以下の精度保証が難しい. 歯車の形状に関する単位は,長さと角度である.参照標準は,高精度に加工でき,長さや角度の国家標準とトレーサビリティがとれる幾何形体を使用することが合理的である.球や平面の形状は,数十nmのオーダで製作,評価することができる.本研究では,このような幾何形体を組み合わせることにより,仮想歯車形状と見立てることのできる歯車測定機の校正用幾何形体基準器を開発した.昨年度までに,歯形用,ピッチ用校正基準器を開発し,報告した.本年度は,これまでに開発した基準器に加えて,歯すじ測定を校正できる平面基準器を開発した. 歯すじ校正用平面基準器は,1つの球と2つの平面で構成される.1つの球とデータム面で仮想歯車回転軸を定義し,その仮想歯車回転軸に対してある角度をもった平面を仮想平面とみなす.開発基準器によって歯車測定機を校正するために,(1)歯車測定機の校正法(2)基準器の設計法(3)基準器の校正法を提案した. これらの研究を通して,世界で初めてサブμmオーダの精度を伴って,主要な検査項目全てのトレーサビリティ体系が整うことに貢献した.
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