2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J08035
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
中西 慶子 The Institute of Physical and Chemical Research, 中野生体膜研究室, 特別研究員(PD)
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Keywords | 分化 / ストレス / アポトーシス / 小胞体 |
Research Abstract |
これまでの研究から、筋分化という生理的条件下において小胞体ストレスシグナルが発生していること、このストレスシグナルが分化に伴うアポトーシスを引き起こしていること、さらにストレスシグナルが筋分化自体にも必要であることを明らかにした。この生理的条件下で発生する小胞体ストレスシグナルの実体は未知であり、本研究はこのストレスの実体を明らかにし、その制御機構の解明を目的としている。 筋芽細胞が筋管細胞へと変換する筋分化過程において、細胞内では小胞体から筋小胞体への変換が起こる。小胞体の構造・機能変化が分化とストレスの接点になる可能性を中心に検討を行った結果、筋分化時と小胞体ストレス誘導時に共通して見られる小胞体膜構造の変化を見出した。培養筋芽細胞に対して分化誘導を行うと、筋芽細胞が互いに融合し筋管細胞へと分化するが、筋芽細胞の融合に先んじて小胞体ストレスシグナルが発生する。この時同時に小胞体由来の独立した膜構造が出現していることを見出した。薬剤を用いて小胞体ストレスを人為的に誘導した場合においても、筋分化過程で見られた小胞体の構造と類似した構造が生じていた。これら小胞体由来の特殊構造はストレスの減衰と共に消失した。一方でストレスを回避出来ずに死に至った細胞内にはこの構造体が蓄積していることが確認された。以上のデータは、この構造体が小胞体ストレスの発生に依存して生じるものであり、ストレスに対する緩和またはストレスによるアポトーシス誘導に関わる新規の構造体であることを示唆している。 本研究は生体内における細胞分化の理解において重要であり、他の状況では異常な細胞死を誘導することさえあるシグナル経路が細胞の分化に利用されていることを実証するという画期的なものである。
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Research Products
(1 results)