2008 Fiscal Year Annual Research Report
量子フィードバック制御:その熱力学的解析と巨視的コヒーレンスへの応用
Project/Area Number |
08J08038
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
沙川 貴大 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 量子情報 / 量子測定 / 量子フィードバック / マクスウェルのデーモン / ランダウアー原理 / 非平衡統計力学 / 熱力学第二法則 |
Research Abstract |
量子測定や情報の消去といった情報処理に要するエネルギーコストの熱力学的な限界については,多くの先行研究がなされてきた.とくに先駆的な仕事は"Landauer原理"である.それによると,Hナット(自然対数で測った情報量の単位)の情報を,温度Tの熱浴と接触しているメモリから等温的に消去するには,少なくともkTHの仕事が必要で(kはボルツマン定数),それと同量の熱が環境に散逸する.しかしこの「原理」は,最初Landauerによって直感的に述べられただけである.また,その統計力学的な証明はJarzynski等式を用いて近年なされたが,それが妥当するのはメモリのポテンシャルがある種の対称性をもつ特殊な場合だけだった. 平成20年度の研究で私は,メモリが非対称な場合も含む形に一般化されたLandauer原理を,量子統計力学と量子情報理論を組み合わせて厳密に証明した.それによると,情報をメモリから等温的に消去するのに要する仕事の下限は,シャノン情報量Hとメモリの自由エネルギーの差で決まる.この下限は一般にはLandauer原理と異なったものになる一方で,メモリが対称性をもつ特殊な場合としてLandauer原理を含んでいる.また,その下限を達成する消去を行えるようなメモリのモデルも構築した. また,測定に要する仕事の下限も導いた.その下限は,シャノン情報量Hとメモリの自由エネルギーの差に加えて,メモリが測定で得た相互情報量Iで決まる(測定が量子的な場合は,[1]で導入された一般化された相互情報量になる).また,上記の二つの下限を合計することで,消去と測定を合わせた仕事には原理的な下限があり、それは相互情報量だけで決まることが分かった.以上の結果を論文(arXiv:0809.4098)にまとめて,現在Physical Review Lettersに投稿中である.
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Research Products
(11 results)