2009 Fiscal Year Annual Research Report
量子フィードバック制御:その熱力学的解析と巨視的コヒーレンスへの応用
Project/Area Number |
08J08038
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
沙川 貴大 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 量子フィードバック制御 / 熱力学第二法則 / 量子情報理論 |
Research Abstract |
平成21年度の主要な成果は、フィードバック制御された非平衡系において成立する一般化Jarzynski等式を導出したことである。 1997年に発見されたJarzynski等式は熱力学第二法則をすべての次数のゆらぎ(キュムラント)を含む形に一般化したものであり、1次キュムラントの性質として通常の第二法則を含む。一方、私の以前の研究によって、量子フィードバック制御が存在する状況下では、熱力学第二法則が情報量を含む形に一般化されることが明らかになっていた。本年度の研究では、フィードバック制御が成り立つ状況下にJarzynski等式を一般化することに成功した。なお、数年前に私は一般化Jarzynski等式を試みたが、その証明には大きな理論的不備があり、論文の出版には至らなかった。今回はそのような不備のない形での新しい定式化と完全な証明を与え、結果をまとめた論文はPhysical Review Lettersから出版された。この一般化Jarzynski等式は、情報量と散逸量についてのすべての次数のキュムラントを含んでおり、とくにその1次キュムラントの性質として(以前の私の結果である)一般化第二法則を再導出することができた。さらに2次キュムラントからは、情報を含む形に一般化された揺動散逸定理が導かれた。このように一般化Jarzynski等式は2次以上のキュムラントを含んでいる。したがってこれはフィードバックを含む非平衡ダイナミクスの解析において重要な役割を果たす基礎理論となり、その導出は(複雑な非平衡プロセスである)量子フィードバック制御を本格的に解析するための重要なステップである。
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Research Products
(21 results)