2010 Fiscal Year Annual Research Report
人為攪乱と水位管理による氾濫原植物の出現メカニズム解明
Project/Area Number |
08J08057
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
石田 真也 新潟大学, 大学院・自然科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 自然再生 / 植物 / 沖積平野 / 氾濫原 / 河川 / 水田 / 埋土種子 / 多様性 |
Research Abstract |
日本最大の水田単作地帯である越後平野は、かつて広大な氾濫原湿地帯であった。しかし、戦後の圃場整備によって、本来の氾濫原湿地としての環境は急速に失われた。本研究では、越後平野のあらゆる氾濫原環境における植物種組成とそれを規定する要因について広域的・横断的に調査し、平野全体の植物種多様性を保全していくための土地管理指針を構築することを目的としている。さらに、具体的な保全手段の一つとして、「休耕田の湿地化(再生湿地)」に着目し、越後平野の休耕田における野外実験を3年間継続した。この実験では、現在では激減している水湿生植物種の埋土種子の発芽を効果的に促すための休耕田の管理方法の特定を目指した。研究最終年度である今年度は、再生湿地の管理・調査を継続するとともに、越後平野の農業用水路網において野外調査を行った. 今年度までの調査によって、越後平野の水田地帯における全ての氾濫原要素(耕作田・休耕田・農業用水路)において植物の出現パターンを評価できた。その結果、休耕田と土水路の環境の多様性が圃場ごとの植物種組成の多様性を生み、平野全体の植物種多様性を高めていることが明らかとなった。特に、管理が粗放な休耕田や、水が抜けにくい土水路では、かつて湿地帯だった頃に生育していたと考えられる水湿生種が出現した。さらに、水深11cm以上で管理した再生湿地では、上記のいずれの氾濫原環境にも生育が確認されなかった種が出現したことから、本取り組みが水湿生植物の保全に有効であることが示された。以上より、越後平野のような沖積平野の水田地帯における植物種多様性の保全を検討する際には、植物にとって過酷な攪乱体制である現代農業の耕作圧の緩和が必要であると言える。今後、人口の減少に伴って耕作田の面積が縮小していくと考えられることから、耕作放棄される土地を計画的にかつての湿地帯だった時代の環境に戻していくような土地利用計画を検討する必要があるだろう。
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Research Products
(7 results)