Research Abstract |
これまで当研究グループにおいて,無極性面4H-SiC基板上へAlNをMBE成長することによって,通常の2H構造と異なる4H構造の無極性面AlNが高品質に成長可能であることを報告してきた.本研究では,この高品質無極性面4H-AlNを利用した光デバイス,電子デバイス実現の基礎を確立することを目的として,AlGaNとAlN/AlGaN量子井戸構造の成長と特性評価,およびAlN/SiC界面を用いた金属/絶縁体/半導体(MIS)デバイスの作製,特性評価に取り組んだ.まず,AlGaN成長においては,複数存在する無極性面のうち特定の面を選ぶことでAlNと同等の品質を有するAlGaNが成長可能であることを見出した.また,このAlGaNとAlNを用いで量子井戸構造を作製することで,欠陥発生や結晶構造変化を伴わない良質な量子井戸構造を無極性面上に4H構造で作製可能であることを示し,さらに,発光特性評価において,明瞭な発光を得た.これらの結果は,本研究特有の4H構造AlNが,現在盛んに研究が行われている2H構造AlNと並んで,深紫外固体発光の可能性を有していることを示すものである.また,SiO2/SiCを利用した次世代電力デバイスSiC MOSFETにおける課題である,低いチャネル移動度を解決すべく,高品質4H-AlNを代替ゲート絶縁膜として用いた,SiC MISFETの作製を試みた.作製したMISFETは,この系において初めてとなる明瞭な動作を示し,4H-AlNの電子デバイス応用の可能性を示すことに成功した.本研究のAlN/SiC界面は,同一結晶構造(AlN:4H,SiC:4H)とヘテロバレント(族が異なる(AlN:III-V族,SiC:IV-IV族))の特徴を有しており,電子デバイスとして動作したことは,実用への可能性が示されただけでなく,学術的にも興味深いものである.
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