2009 Fiscal Year Annual Research Report
反応拡散系の制御による刺激応答性高分子ゲル上でのパターン形成と機能化
Project/Area Number |
08J08123
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
上野 智永 The University of Tokyo, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 反応拡散系 / 非平衡 / 非線形 / ゲル / 刺激応答性 / FIS反応 |
Research Abstract |
自然界にみられるパターン形成は非線形・非平衡系で生じる散逸構造形成と大きく関連している。このような散逸構造形成が生じる反応拡散系の一つとしてFIS(ferrocyanide-iodate-sulphaite)反応がある。FIS反応を媒体であるゲル中で生起させると、自己複製パターンなどの時空間的なパターンが生じる。このようなパターンは系のダイナミクスによって支配されており、反応や拡散、境界条件などの影響を受ける。本研究ではこの反応媒体となるゲルに刺激応答性を導入することで媒体を外部刺激によって変化させ、系のダイナミクスを変化させることでパターン形成の制御を行うことを目的としている。 本年度は、次の2点について具体的な検討を進めた。1点目は刺激応答性を有さないポリアクリルアミドゲルを反応媒体としてFIS反応の温度依存性や、拡散依存性、厚み依存性について実験を行った。これを時空間解析することでパターンの時空間的な特性を明らかにした。これらの基礎的な検討を通して、今後の機能性ゲル中でのパターンの挙動を解析するにあたっての具体的な指針を得た。2点目は刺激応答性高分子ゲルの作成およびパターン形成挙動の実験を行った。相転移温度が異なる数種類のアクリルアミド誘導体を合成し、ゲルを作成してパターン形成挙動の実験を行った。しかし、アクリルアミドゲルではパターン形成が起こるのに対して、二級アミドや三級アミドのゲルではパターン形成がうまく起こらなかった。そこで、アクリルアミドの主鎖網目にポリN-イソプロピルメタクリルアミド鎖をグラフトさせたゲルでパターン形成の実験を行った。その結果、相転移温度付近を境にパターン形成の挙動にやや違いがみられた。これらの研究は、微小な空間スケールの変化が結果としてマクロなパターンに影響を与えるという階層性をモデル的に示すものとして意義があると考えている。
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Research Products
(4 results)