Research Abstract |
慢性閉塞性呼吸器疾患(COPD)における慢性炎症の治療は,多くの患者においてステロイドが無効であるために困難を極めていたが,近年,ヒストン脱アセチル化酵素であるHDAC2がCOPD患者におけるステロイド感受性を制御することが明らかになり,新規COPD治療薬の標的として提起された.しかしながら,HDAC2の活性制御機構はほとんど明らかになっておらず,ましてやその発現制御機構に関しては一切明らかになっていない. [研究課題1]HDAC2の発現制御機構の解明. 本課題では,喫煙による酸化ストレスのモデルとして過酸化水素処理を行い,そのHDAC2発現への影響を検討した.その結果,過酸化水素の容量依存的にHDAC2の発現量の減少が見られた.そこでメカニズム解明を目的として,HDAC2プロモーターのin silico解析および阻害剤を用いた検討結果から,転写因子Sp1がHDAC2の発現制御に関与することが初めて示唆された.さらに,過酸化水素処置がSp1の転写活性を抑制することも明らかにした.したがって本研究結果は,酸化ストレスによるHDAC2の発現抑制は,転写因子Sp1の活性抑制に起因するものであることを強く示唆した. [研究課題2]分子シャペロンHSP72を標的としたHDAC2活性制御機構の解明. 本課題では,HDAC2発現制御薬または活性制御薬の薬効評価モデルの構築を目的とし,COPDモデルマウスの作製に取り組んだ,近年,Boucher(Nat Med.2004)らの報告により,上皮型ナトリウムチャネルであるβ-ENaCの気道特異的過剰発現マウスがCOPD様の症状を示すことが報告された.しかしながらこのマウスモデルは,恒常的な過剰発現マウスで病態が強すぎて,4週齢までに60〜70%が死に至るという問題が生じていた.長期の薬物評価を考えた場合,この問題を解決したマウスモデルが必要となる.そこで申請者は,TetOn systemを用いてβ-ENaCの気道特異的コンディショナルトランスジェニックマウスの作製を行っている.現在,2種類のストレインを得ており,気道病態の解析中である.
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