2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J08143
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大薗 博記 Kyoto University, 教育学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 協力 / 信頼 / 表情 / サンクション / シグナリング / 性差 / 笑顔 / 進化 |
Research Abstract |
20年度は、中・長期的な関係に及ぼす表情の影響を検討した。これまでの研究で、笑顔の人物の方が、真顔の人物よりも、より信頼されやすいことは示されてきているが、本研究では、表情がその後の関係にどのような影響を及ぼすかを検討した。具体的には、信頼ゲームを使ったゲーム実験を行った。信頼ゲームにおいて、実験者は取引相手にいくら手持ちの金銭を提供するかを決定し、相手は提供された金銭を平等に分配するか、独占するかを決定する。本研究では、実験参加者には、信頼ゲームを行う前に相手の顔写真(笑顔/真顔)を呈示し、それを参考に提供額を決定させた。このゲームは、相手が信頼できるほど多く提供した方が得な利得構造を持ち、提供額は他者への信頼の行動指標として考えられる。実験では、提供額の決定後、相手の選択(平等分配/独占)を提示した上で、相手の獲得額を減額できる罰セッションを設け、表情によって罰行動がどのような影響を受けるかを実験的に調べた。これまで、言語表明については、自らが信頼できることを言語表明した人物が後に信頼を裏切った場合、その人物に対する罰行動が促進されることが示されてきており、そのような罰行動が嘘の言語表明をすることを抑制させる機能を有していると考察されている。表情においても言語表明と同様の現象が生じるかについて、本研究においては注目した。その結果、笑顔表情で信頼を裏切った(独占を選択した)人物の方が、真顔で信頼を裏切った人物より、特に女性参加者において、「笑顔の人物を真顔の人物より罰しにくい(許す)」という傾向がみられた。このことは、表情が信頼関係の構築において、言語情報とは異なる機能を持っていることを示しており、今後その機能の違いについて、より詳細な検討をする必要があるだろう。
|
Research Products
(5 results)