Research Abstract |
近年自然災害が急増する中で,河川における洪水氾濫被害の低減を目指した河川整備が重要となる.しかし,生物の生息・生育環境の創出や親水性の高い水辺環境の創出を目的とした河川整備についても行う必要がある.そこで本研究では,治水安全度と環境機能の両立を目指し,河川環境の健全度診断法を確立していくことを目的とする.研究初年度である平成20年度は室内における実験的研究,実河川における観測などを行った.開水路流に関しては,洪水時における植生群落を有する流れ,側岸凹部を有する流れ,洪水氾濫流に関して検討を行った.河道内の植生群落は河川環境の形成において重要な役割を担っている一方,治水安全度上のマイナス面を有する.このため,植生群落の配置の違いによる流動抵抗特性について検討し,その抵抗特性を植生域と非植生域との境界における乱れ特性や運動量輸送特性を明らかにすることで説明した.また,河道側岸に沿う湾状の死水域は多様な生態系や親水性の高い水辺環境を創出するといった機能を有している.このため,流下方向に連続的に側岸凹部を有する開水路流れにおいて,凹部のアスペクト比を変化させたときの抵抗特性について検討し,水面変動特性や運動量輸送特性を明らかにした.さらに,洪水氾濫の被害を低減するため,河道内の洪水氾濫流の挙動を知る必要がある.このため,洪水氾濫流の二次流特性および運動量輸送特性に関して検討した.また,実河川において河川生態系の保全を目的として,絶滅危惧種に指定された植生ヒラモに関する物理的最適生息環境に関する検討を行った.これにより,ヒラモの生息には,砂礫河床であり,比較的水深が浅く,流速が相対的に大きい流況が望ましいことが明らかになった. これらの研究成果は治水および河川環境に考慮した研究内容であり,得られた知見を今後河川環境の健全度診断法の確立に活かしていく.
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