2009 Fiscal Year Annual Research Report
サミュエル・ベケットと現代フランス・イギリスの舞台芸術
Project/Area Number |
08J08199
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
鈴木 哲平 Waseda University, 文学学術院, 特別研究員(PD)
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Keywords | サミュエル・ベケット / フランス文学 / 現代演劇 / 現代小説 / ジャンル / メディア / 文体 / レトリック |
Research Abstract |
今年度の研究目的は、20世紀を代表する小説家・劇作家であるサミュエル・ベケットが、その執筆スタイルを確立した1940年代後半の創作技法を、統一的視点から記述することにある。とりわけ、従来、小説と演劇がそれぞれ断続的に書かれた時期でありながら、それぞれのジャンルを個別に分析してきた研究史を踏まえ、二つのジャンルの相互作用に注目する。 具体的には、40年代前半以前の時期(「伝統的」小説を引きずっている時期)と50年代以降の時期(40年代に行き詰った後に、新しい方法を模索、完成する時期)それぞれの特徴を記述し、ここで特権的に取り上げる1940年代後半の作家の方法、すなわち言葉の意味作用を「裂開」する「かたち」を作り上げるという方法を明らかにすることを目指す。さらにその1940年代後半の方法を、46-47年、48-49年、49-50年という三つの時期にさらに下位区分し、その特徴に注目しながらその変遷を分析する。48-49年については既に前年度に検討したが、今年度は、49-50年の特徴を分析し(学会にて研究発表)、さらに50年代以降の特徴について研究した(研究論文として発表)。 今後、40年代前半と46-47年の分析によって、上記研究目標を達成したいと考えている。また、今年度の研究によって、ジャンルとも技法とも異なる「メディア」という概念が、40年代後半という時期に重要であることが明らかになっており、この点についても、さらに考察を深めていきたい。 本研究によって、今まで十分に注目されてこなかった二つの点を明らかにすることができるだろう。すなわち、ベケットにおけるジャンルの相互作用の問題を明らかにすること、さらに、1946-47年に書かれた作品の意義である。 今年度の科学研究費によって、最新のベケット研究を参照すること、また、ベケット研究を通じて、ベケットに影響を与えた作家たちをも参照することができた。購入した小型パソコンと電子辞書によって、研究環境も大きく改善された。
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Research Products
(2 results)