2008 Fiscal Year Annual Research Report
コーポレートガバナンスにおける取締役の機能とその責任
Project/Area Number |
08J08207
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
白井 正和 The University of Tokyo, 大学院・法学政治学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | コーポレートガバナンス / 企業買収 / 取締役 / 米国法 / エージェンシー問題 / 判例法理 |
Research Abstract |
本研究は、企業経営において生じる取締役と株主との間の利害対立を解決するための手法として、取締役の責任制度をはじめとする法制度が果たすべき機能に着目するものである。企業経営の場面では、専門的技能を有する取締役による経営を通じて、会社の背後に存在する株主は利益を受けることが可能となる反面、取締役と株主との間の情報の非対称性および利害の不一致が存在することから、取締役を規律する仕組みが必要となる。そして、その仕組みとして重要な役割を果たしているのが法制度である。そこで、取締役と株主との間の利害調整の仕組みとしての法制度に着目し、その望ましいあり方を検討するのが本研究の課題である。今年度は、友好的買収の場面を題材として、買収対象会社の取締役と株主との間の利害調整の仕組みを検討した。コーポレートガバナンスにおける重要な場面の一つとして友好的買収の場面を選択したのは、企業買収の場面では取締役と株主との利害対立が先鋭化すること、わが国においても企業買収が増加傾向にあり、そのほとんどが友好的買収の形態を採用していること、それにもかかわらず、わが国では友好的買収の場面における買収対象会社の取締役を規律する仕組みは不十分であり、議論も不足していることが理由である。そして、企業買収に関する法理が発達している米国における規律の枠組みや、その背後にある考え方から主に示唆を得ながら、友好的買収の場面における買収対象会社の規律付けについて調査を行った。特に、米国の豊富な実証データを参考にすることで、取締役の行為を法が規律することで得られる利益と失われる利益について考察することができたことは大きな進展であった。今後はわが国の友好的買収の現状を調査しながら、取締役と株主との間の利害調整の仕組みとしての法制度のあり方を検討する予定である。
|