2008 Fiscal Year Annual Research Report
現代エチオピアにおける被差別民の「民族」としての実体化に関する人類学的研究
Project/Area Number |
08J08228
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
吉田 早悠里 Nagoya University, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 文化人類学 / 民族誌 / 民族 / マイノリティ / エチオピア / 差別 |
Research Abstract |
本研究は、「民族自決」が憲法で認められるエチオピアにおいて、被差別民マンジョが「民族」として実体化していく姿を現在進行する過程から明らかにするものである。そこから、民族、差別、マイノリティについて再考することも目的としている。 当該年度は、エチオピア南西部カファ地方において同地区に居住するマンジョとカファを対象とした現地調査を9ヶ月間実施し、一時資料の収集に尽力した。1991年以降のエチオピアの現政権が「民族自決」を謳い、すべての「民族」の自決権を認め、連邦制を採用する中で、マンジョはカファ社会におけるマンジョの社会的地位・権利の保障やカファによる差別の改善を求める請願活動を行ってきた。その後、マンジョは自分たちが「民族」であることを主張し、「民族」としての権利保障を求めて請願活動を行っていることが明らかになった。マンジョは、自らの主張を国家政策にすり合わせて政治活動を行っているのである。このようなマンジョの政治行動の分析を通じて、現政権下における被差別民の主体性と政治的な民族生成のプロセスを明らかにし、エチオピアにおける被差別民の権利の保障のあり方について問題提起を行った。 以上から、本研究は、民族の生成に関する人類学の議論に大きなインパクトを与えるものである。また、これまで研究が行われてこなかったマンジョの生業や習慣、その変化について新たな知見を加えたという特色を持ち、エチオピア地域研究の分野で大きな意義がある。 研究成果は、国内の学会発表と、英語の論文として発表した。
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