2008 Fiscal Year Annual Research Report
リゾホスファチジルコリンアシル基転移酵素LPCAT1の機能探索
Project/Area Number |
08J08274
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
原山 武士 The University of Tokyo, 大学院・医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 肺サーファクタント / LPCAT1 / PAF / 血小板活性化因子 / AGPATモチーフ / 呼吸 / ホスファチジルコリン / 肺 |
Research Abstract |
リゾホスファチジルコリンアシル基転移酵素LPCAT1の解析を中心に行っている。この酵素は呼吸に必須な界面活性物質(肺サーファクタント)の主成分である脂質の生合成に中心的な役割を果たすと考えられている。LPCAT1は基質としてリゾホスファチジルコリンとアシルCoAを用いて、ホスファチジルコリンを合成することができる。 私は、LPCAT1において、よく保存されているAGPATモチーフ2の機能を調べるため、AGPATモチーフ2の変異体を作成し、解析した。AGPATモチーフ2の変異体のいくつかはアシルCoAの基質特異性が変化し、この領域がアシルCoAの識別に重要であると考えられた。 LPCAT1は肺サーファクタント脂質のホスファチジルコリンを合成しうる酵素として初めて報告されたが、私はこの酵素が生理活性脂質である血小板活性化因子PAFの合成活性も持つことを見出した。炎症性の刺激に対する応答などを調べると、どうやらLPCAT1は非炎症時における機能が大きいと思われた。炎症性の刺激により活性化及び発現上昇するPAF合成酵素、LPCAT2との比較により、生体は炎症時にLPCAT2、非炎症時にLPCAT1の二つの異なるPAF合成酵素を使い分けている、ということが示唆された。 これまでのLPCAT1研究はマウス、ラットの遺伝子を中心に行われていた。ヒトの酵素についてはLPCAT活性がないという報告がなされた。私はこれに反論するため、ヒトLPCAT1のクローニングを行い、ヒトLPCAT1がLPCAT活性を持つことを示した。ヒトLPCAT1は肺における発現が高く、近縁の遺伝子を含んだ系統樹を描くと、LPCAT1の進化が肺の進化と同様に振る舞っていることがわかった。これらの観察から、LPCAT1はヒトにおいても肺サーファクタント合成酵素としての機能を持ちうることがわかった。
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