2008 Fiscal Year Annual Research Report
東アジアにおける銅鏡拡散・受容システムからみる弥生時代社会の変動過程に関する研究
Project/Area Number |
08J08294
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
南 健太郎 Kumamoto University, 大学院・社会文化科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 漢鏡 / 破鏡 / 小形彷製鏡 / 伝世鏡 |
Research Abstract |
本年度は銅鏡の資料調査を中心に研究を行った。調査ではこれまでの銅鏡研究で行われてきた文様の観察や実測図作成に加え、ルーペ(10倍)や実体顕微鏡(20倍)での観察を行った。ルーペや実体顕微鏡での観察を行うことによって銅鏡の表面に残存する鋳肌(鋳造直後の銅鏡に残存する凹凸)の観察が可能となり、鋳肌の状態によって銅鏡がどの程度使用されていたのかを検討した。またこれによって、前期古墳から出土する銅鏡で弥生時代から長期間保有されてきたとされたとされる文様不鮮明な銅鏡が伝世したのか、それとも鋳造技術上の問題から文様が不鮮明になったのかを検討した。 上記の方法で九州を中心として四国、関西、東海、関東での調査を行い、韓国においても資料の実験調査を行った。調査は中国で製作された漢鏡、漢鏡の再加工品である破鏡、日本列島で製作された小形彷製鏡について行った。この結果、まず九州の前期古墳から出土した銅鏡は伝世の痕跡がみられないことが明らかとなり、伝世鏡が存在していなかったことを明らかにした。しかし破鏡については伝世の痕跡が確認され、銅鏡すべてが同様な扱いではなかったことが鮮明となり、その拡散形態や時期も異なっていたことを実証的に証明することができた。また九州外で出土する小形彷製鏡の中に製作技術からみて明らかに九州外で製作されているものが存在し、九州外における銅鏡生産の変遷を明らかにすることができた。このような検討に加え、銅鏡の日本列島における時間的・空間的変遷の検討を行い、弥生時代においてはその洋総が一様ではなく、地域間関係の変動が各時期においてみられることを明らかにした。 最後に本年度はこれまでの研究成果をまとめ、熊本大学に博士論文を提出した。
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Research Products
(1 results)