2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J08307
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
伊藤 大幸 Nagoya University, 大学院・教育発達科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ユーモア / 笑い / 不適合理論 / 感情 / 認知心理学 / 情動 |
Research Abstract |
ユーモアの生起メカニズムを実証的に検討するため、本年度は2つの実験を実施した。 実験1では、ユーモラスな事象に含まれる"不適合ユニット"の数を操作し、ユーモア反応の変化を検討した。不適合ユニットとは、"真面目な人が転倒"、"卒業式に着ぐるみで参加"のような、情報の特異的な組み合わせを意味する。実験の結果、不適合ユニットの増加にともない、ユーモア反応が直線的に強まることが示された。これは、筆者が提案する理論モデルの基本的仮説に一致し、不適合ユニットがユーモア喚起の最少要素であることを示唆している。 不適合ユニットの概念は、理論的に2つの次元によって記述できる。1つは、情報同士の結合の強さ、もう1つは、情報の組み合わせの特異性である。例えば、"真面目な人が転倒"より"真面目な人が凍った水たまりで転倒"の方が、因果的説明が含まれる点で"真面目な人"と"転倒"の結合が強い。また、"やんちゃな子どもが転倒"より"真面目な人が転倒"の方が、通常起こりにくい事象であるため、情報の組み合わせの特異性が高い。実験2では、これら2つの次元について独立に操作を行い、ユーモア反応の変化を検討した。その結果、情報間の因果的結合が強いほど、また、情報の組み合わせの特異性が高いほど、ユーモア反応が強まることが示された。このことは、筆者の理論モデルに一致し、ユーモアの生起に至る認知プロセスにおいて、複数の情報を因果的に結びつけるプロセスと、結びつけられた情報の組み合わせの特異性を評価するプロセスが独立に存在することを示唆している。従来の理論において、情報間の因果的結合性の弱さと、情報の組み合わせの特異性は、互いに区別されず"不適合"という概念で扱われてきたが、本研究の結果は、これら2種類の不適合がユーモアに対して、独立に、しかも、反対の影響を及ぼすことを示している点で、きわめて重要な意味を持っている。
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Research Products
(2 results)