2008 Fiscal Year Annual Research Report
マイクロクラスターにおけるメソタイムスケールダイナミクス
Project/Area Number |
08J08311
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
新山 友暁 Ritsumeikan University, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | マイクロクラスター / 動力学 / 統計力学 / ミクロカノニカルアンサンブル / 拡散現象 / 局所温度 |
Research Abstract |
ミクロカノニカル集団を形成するマイクロクラスターのような少数粒子系において、非一様な粒子温度分布が形成されうることを数値シミュレーションによって明らかにし、全並進・全角運動量保存を取り入れたミクロカノニカル測度を用いた統計力学的な解析によって、粒子温度分布や運動エネルギー分布関数の解析的表式をえた。短報論文ですでに公表したこれらの結果に加えて、直観的な粒子温度分布の表式を導出することで、全並進・全角運動量保存がこの現象の原因となっていることを明確にした。以上の結果の詳細をPhysical Review E誌に投稿した。 これと並行して、クラスターにおける高速拡散現象について分子動力学シミュレーションをもちいた研究をおこない、アルカリハライドと金属クラスターでは拡散の進行するメカニズムが異なることを明らかにすることができた。また、この拡散機構の違いを説明するために、クラスター内の原子空孔移動のダイナミクスに注目し、そのポテンシャル超曲面上の局所安定点と鞍点のエネルギーを評価することで、空孔生成および移動エネルギーを評価した。 この結果、後者に関しては議論の余地があるものの、生成エネルギーに関しては相対的にサイズ依存性が認められた。ただし、クラスター系においてはこのエネルギーの絶対値は定義によって大きく異なる値をとりうることもわかった。このような結果に対して、空孔濃度の温度依存性を評価することで、空孔生成エネルギーとして妥当な定義はどのようなものであるかを議論することができると考えており、空孔移動のダイナミクスおよびそのエネルギー評価とあわせて今後の課題である。
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