Research Abstract |
報告者の主な研究対象は,Kazhdanの性質(T)と呼ばれる群の性質および,その拡張である.性質(T)は様々なケースでの群作用の剛性を表している(Margulis, Zimmer, Shalom, Popaなど)だけでなく,ケーリーグラフを通じて群から作られるエクスパンダ族のバナッハ空間への埋め込み存在問題など(Lafforgue), metric geometryとも関わる重要な性質である.性質(T)は群のヒルベルト空間への等長アファイン作用の固定点性質と同値である.2007年,Bader-Furman-Gelander-Monodの4人は,性質(T)をバナッハ空間(ないしはその族)B上のアファイン等長作用の固定点性質に拡張し,この性質を(FB)と名付けた.以下,pを(1,∞)の範囲でとる.BをLp空間のなす族L^pとしたとき,(i)局所体上の高ランク半単純代数群と格子は(FB)を満たし([BFGM]),一方,(ii)(T)をもつ双曲群であっても個々pが大きくなると(FB)を満たさなくなる(Bourdon-Pajot, Yu),という分離的な現象が明らかになった.報告者は普遍格子SL(n,Z[x1,…,xk])について研究を進め,次の結果を得た.但しEはヒルベルト空間と同値なノルムをもつバナッハ空間の族またはL^pである.性質(FFE)とは報告者によって定義された,(FE)のquasi化である. 定理:次数が4以上ならば,普遍格子Γは(FE)より強い性質(FFE)を,非自明な線型部分についてもつ. この定理により,(FL^p)を任意のpで満たす,という非常に強い剛性をもつクラスの(可算離散)群で,初めて算術的でないものが得られた.さらに,非自明な線型部分に対し,2次元の有界コホモロジーから通常のコホモロジーへの自然な写像が単射であることも従う,次いで,自明な線型部分に対する(FFE)に当たる性質も研究し,擬準同型に関するAbert-Monodの問題(ICM,2006)を,次数が6以上のときに解決した.
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