2009 Fiscal Year Annual Research Report
主体と社会の再帰化が進行する時代の新しい意思決定論の構築のための精神分析的研究
Project/Area Number |
08J08320
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
萩原 優騎 The University of Tokyo, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 再帰性 / 近代化 / 合理性 / 科学技術社会論 / 環境・生命倫理学 / 精神分析 / 機能的寛容 / 参照枠 |
Research Abstract |
昨年の基礎的な研究成果に基づいて考察を展開させることを、今年度の課題とした。ローカルな場面での意思決定を考える際には、当事者たちがこれまで依拠してきた伝統の変容過程や近代化の在り方を、どのように捉えればよいのかということが問題となる。 今年度に焦点を当てたことは、第一に、意思決定の場面で「合理的」とされるものについての評価である。将来的な影響が不確実な科学技術に関しては、科学的な知見だけでは合理的な判断には至らないとされる。そこで、当該の科学技術が使用される具体的な場面に関与する人々の意思決定の合理性、すなわち社会的合理性が重視されるようになった。しかし、そこで「合理的」とされる内容の妥当性をも、批判的に問う必要がある。この問題に関する理論的考察と、それを実践する手法について、議論を展開した。第二に、そのような批判的な営みが成立するためには、意思決定に関与する人々が、自身の従来の自明性を相互に問い直していく、公共的な過程が不可欠となる。この過程について、精神分析が示す人間の認識の構造についての理論を援用し、モデル化したものを提示した。 これらの点は、従来の科学技術社会論が扱ってきた意思決定についての考察において、十分に問われてこなかったことである。意思決定の場面で、理論や制度が有効に機能するための条件を明示したという点で、大きな意義があると考える。また、そのようにして提示した理論の妥当性を検証するために、前年度に引き続いて事例研究も重ねた。
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Research Products
(6 results)