2010 Fiscal Year Annual Research Report
主体と社会の再帰化が進行する時代の新しい意思決定論の構築のための精神分析的研究
Project/Area Number |
08J08320
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
萩原 優騎 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 再帰性 / 近代化 / 合理性 / 科学技術社会論 / 精神分析 / 機能的寛容 / 意思決定 / 参照枠 |
Research Abstract |
当初の計画に従い、前年度までに展開してきた研究活動の総括を行った。今年度の主要な研究課題は、それぞれの社会に生きる人々が意思決定を試みる場面で用いられる理論が、有効に機能する条件とは何かという点を問うことである。昨年度の研究にて、人々がローカルな環境の中での人と自然との関係、人々の関係、伝統的なものと近代的なものとの関係等を問うための、参照枠となる理論を提示した。また、参照枠を用いる人々が、どのような形で意思決定を進めていけばよいのかということについて、個人の認識の構造を記述する精神分析のモデルに依拠して検討した。 今年度の研究では、こうして自己批判的な認識を人々が獲得し、参照枠を用いて意思決定を進めていく作業が実効的なものとなる、社会の諸条件を考察した。すなわち、意思決定のための理論が提示されたとしても、そこに関与する人々が生きる社会の制度や参加の仕組みが整っていなければ、それらは有効には機能しにくい。この問題について、理論研究において方法論を提示した。また、事例研究として、群馬県吾妻川流域の八ッ場ダム開発問題についてのフィールドワーク、現地関係者へのインタビュー等を実施し、ダム問題で疲弊した現地のコミュニティの再建の可能性を検討した。 以上の研究は、地域社会の現状分析にとどまらず、そこにおいて人々が直面している諸問題を解決するための方法及び条件を示したという点で、従来の科学技術社会論や環境社会学の成果をさらに展開していく可能性を提示できたと考える。また、その条件について、個人レベルと社会レベル、そして両者の関係性を示すことにより、精神分析を援用した社会理論の従来の前提を問い直したという点でも、本研究の意義と重要性がある。
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Research Products
(5 results)