2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J08366
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中島 秀太 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | レーザー冷却 / 冷却原子 / フェッシュバッハ共鳴 / 光格子 / 強相関 |
Research Abstract |
当該年度の前半は、フェッシュバッハ共鳴を利用して「相互作用が無限大に発散している系(ユニタリ気体)」を準備し、その超流動転移温度を調べるための実験を行なった。ユニタリ気体は相互作用の発散により計算が困難であり、当研究課題の「理論的なアプローチの難しい領域における物理を実験的にシミュレートする」という目標を実現するための研究対象として適している。当初は、比熱から転移温度を決定する実験を行なっていたが、音速が転移温度と超流動密度についての情報を与えうることが分かり、ユニタリ気体の音速測定を行った。この実験は研究計画の2年度目に検討していた「光ポテンシャルを動的に変化させる実験」の一部を先取りした形になっており、研究計画時に考えていた「フェルミ流体論」との対応だけでなく、液体ヘリウム分野でよく知られる「2流体モデル」との関連もわかりつつある。この研究の一部は物理学会において発表した(学会発表[1])。当該年度の後半は、状態|1>と|2>の2成分フェルミ気体中に、RF分光用のRFアンプを利用して状態|3>の原子をつくり、3成分フェルミ原子系を準備する実験を行なった(学会発表[2],[3])。研究計画では、2年度目に、状態|3>の割合が系の物性に与える影響を調べる予定であったが、当該年度の前半に、他グループも3成分フェルミ系の実験を行なっていることが判明したため研究時期を前倒しした。3成分フェルミ系は、クォーク-グルーオンプラズマとの関連性から注目を集めており、光格子中でバリオン相からカラー超流動相への相転移をするとの理論的予言もある。クォーク-グルーオンプラズマ系は、計算が難しいだけでなく、そもそも測定用の"試料"を作ることが困難(非常に大型の加速器や、宇宙初期の高温が必要)であり、本研究の研究目的である「実験的な量子シミュレータ」の研究対象として魅力的であり、実験を進めている。
|
Research Products
(3 results)