2009 Fiscal Year Annual Research Report
光子標識付き電子エネルギー損失分光法による水素分子2電子励起状態の徹底研究
Project/Area Number |
08J08376
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
沖原 理沙 (石川 理沙) Tokyo Institute of Technology, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 水素分子 / 2電子励起状態 / 電子-分子衝突 / Lyman-α光子 / 反応素過程 |
Research Abstract |
本研究は、水素分子2電子励起状態が示す量子ダイナミクスを徹底的に追究することを目的としている。平成21年度は当初の計画通り、昨年度から取り組んでいた装置の改良を完了させ、入射電子エネルギー80eV、電子散乱角3°、20°、30°の条件下で、電子損失エネルギーが20~45eVの水素分子のLyman-α光子標識付き電子エネルギー損失スペクトルを得た。それらの縦軸は共通なので、各角度同士のスペクトル強度を比較することが出来る。電子散乱角3°、20°において得られた光子標識付き電子エネルギー損失スペクトルには、どちらにおいても26eV、34eVを中心とした2つのピークが観測された。これらのピークは過去の研究から、前者が光学的禁制、後者が光学的許容状態に起因することは分かっている。得られた結果の中で最も重要なのは、この2つのピーク強度比である。散乱角20°では、3°に比べて、光学的許容状態に起因するピークに比べて光学的禁制状態に起因するピークが相対的に小さくなることが明らかになったのである。この傾向は禁制状態への励起断面積の一般的傾向とは異なり、非常に興味深い。また、電子散乱角が20°のスペクトルについては、損失エネルギーが40eV付近でディップ構造が初めて発見され、何かしらの新発見を孕んでいる可能性が大いにある。光子標識付き電子エネルギー損失スペクトルの形とその強度は、関与する2電子励起状態の量子ダイナミクスを鋭敏に反映している。そのため平成21年度の成果には、水素分子2電子励起状態が示す量子ダイナミクスに関する豊富な情報を得たという意義がある。また、以上の現象の起源を明らかにすることはその量子ダイナミクスを明らかにすることに相当し、長年の課題であった理論研究との溝を埋める足がかりになる可能性があるという点において、非常に重要性の高い成果が得られたと言える。
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Research Products
(1 results)