2008 Fiscal Year Annual Research Report
〈贈与としての語り〉の思想史的研究およびその臨床的・社会的応用可能性について
Project/Area Number |
08J08423
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
春木 奈美子 Kyoto University, 教育学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 贈与 / 精神分析 / ラカン / 行動化 / 行為への移行 / 心理臨床 / 歓待 |
Research Abstract |
贈与という概念を手がりとし、心理臨床の場を再考察する研究の第一年目は、思想史的研究から臨床的応用展開する蝶づかいとして文学作品を素材にして進められた。 まず贈与の実践ともいえる歓待という概念を人類学・哲学の諸研究から系譜的に描き出した。これに際して、現代を代表する贈与論者ともいえるフランスの人類学者マルセル・エナフの論考『贈与の人間学と社会的承認』を翻訳し、公刊した。 更にここから得られた歓待の概念を臨床的応用に繋げる考察を展開するために、川端康成の『眠れる美女』を素材として考察を進めた。最終的には、この作品の中に織り込まれた独特な形で展開する「歓待」を、精神分析家ジャック・ラカンの短時間セッションの意義と結びつけつつ、読み解くことで、臨床における歓待の意義を再定義した。 またシェークスピアの『ハムレット』における劇中劇の場面を素材として、ラカンにおける「行動化」と「行為への移行」の概念を明確にした。これによって行動そのものの躓きともいえる行為への移行に宿りうる臨床的意義を抽出することができた。
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Research Products
(3 results)