2009 Fiscal Year Annual Research Report
<贈与としての語り>の思想史的研究およびその臨床的・社会的応用可能性について
Project/Area Number |
08J08423
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
春木 奈美子 Kyoto University, 教育学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 精神分析 |
Research Abstract |
研究者の研究課題は<贈与としての語り>という独自の概念を、まずは、近代哲学、人類学の系譜から整理し、更にフロイト-ラカン精神分析との接続により、最終的には、実践的な応用へと発展させる試みである。これは、研究者が日々実践している心理臨床の現場のなかで生じたアクチュアルな動機づけから発想されたものである。本研究課題を大きく二分するならば、研究前半は、主に文献調査を中心に据えた研究である。これに関して申請者は、これまでフランスに二度の資料収集に出向き、未邦訳の文献を参照することで、我が国で紹介されてこなかったラカンの概念を独自に分節化した(2009年3月「逃げる身体、墜ちる身体-ラカンの行動化と行為への移行」創元社)。現在は、こうした文献研究を更に進化させつつ、応用実践へと結びつけてゆく研究後半の作業も始めている。理論と実践の接続は、常に取りこぼしが伴うと言われるが、これまで積み重ねてきた理論研究から新たな実践の知を切り出し、応用可能な形にすることこそ、本研究の最大の眼目である。この研究後半の作業に取りかかる時期にあたり、申請者自らがラカン派精神分析の実践の地であるフランス、パリにおいて研究を遂行するならば、取りこぼしどころか、むしろ発展的に深化させることができよう。 そこで贈与という概念をひとつの手がかりとして、心理臨床を再考察する研究の第2年目にあたる今年は、八月より研究拠点を、パリ第7大学精神分析学研究科に移し、現在フランスを代表する精神分析家であるソフィードュ・ミジョラ=メロールの研究指導委託のもと本研究テーマを深化させた。 本年度は特にセクシュアリティの領野に焦点を当て、研究を進めたが、特筆すべき業績としては、そうした作業をもとに書き上げた論文がフランスのジャーナルに発表されることが決まったこと、そして海外学会発表も複数回行ったことなどがあげられる。
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Research Products
(6 results)