2008 Fiscal Year Annual Research Report
光スイッチ素子へ向けた一次元電子系の超高速非線形光学応答の研究
Project/Area Number |
08J08448
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田尾 祥一 The University of Tokyo, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | カーボンナノチューブ / フェムト秒分光 / 非線形光学応答 |
Research Abstract |
次世代の全光デバイスに向けた材料の一つに、三次の非線形光学材料がある。三次の非線形光学効果を利用すると全光型の高速信号処理デバイスが実現できる可能性がある。このような非線形光学材料として、近年半導体単層カーボンナノチューブ(SWNT)が注目を集めている。従来、半導体SWNTの非線形光学応答に関する研究は、励起子や光キャリアが実励起されることによる吸収飽和や、それらの緩和ダイナミクスに注目したものであった。最近になって半導体SWNTが光シュタルク効果を示すことが報告された。光シュタルク効果は、二準位系と輻射場の相互作用によって準位がシフトする現象であり、光パルス幅程度の時間での吸収変調が可能となるため超高速光スイッチの原理として注目されている。このことは、コヒーレントな非線形光学応答を理解することが、SWNTを非線形光学材料として用いるためには重要であることを示している。 本研究では、これまで主にバンドル状SWNTが用いられてきたのに対して、孤立分散に優れたSWNT薄膜を用いて、励起子吸収に対して共鳴、非共鳴のエネルギーで励起した際の非線形光学応答を詳細に測定し、理想的な一次元電子系であるSWNTにおける光シュタルク効果の性質を明らかにすることを目的とした。 実験は、130フェムト秒レーザーを用いたポンププローブ吸収分光測定を行った。SWNTのコヒーレント非線形光学応答では、光シュタルク効果によるブルーシフトに加えてブロードニングによる吸収変化が生じ、さらに、このブロードニングは励起子吸収に近共鳴の励起条件でのみで現れることが明らかとなった。この結果は、SWNTの一次元構造のために、励起子間相互作用による非線形光学応答が観測されたものと考えられる。
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