2009 Fiscal Year Annual Research Report
VERAによる銀河系シェルの3次元的運動の解明と回転曲線の高精度計測
Project/Area Number |
08J08530
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 眞弓 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | VLBI / 電波干渉計 / 年周視差 / メーザー |
Research Abstract |
本研究の目的は、銀河系内大規模シェル構造の3次元的運動と起源を解明することである。報告者は本年度、銀河系内シェル構造の解明と並行して、国立天文台VERAプロジェクトの最大テーマでもある銀河系の腕構造と円盤の回転運動の解明をテーマにした水メーザー複数天体の年周視差・絶対固有運動計測プロジェクトを行ってきた。特に、銀河系いて座腕について、VLBIメーザー天体観測による距離と運動計測を行った。銀河系いて座腕は、我々の太陽系よりも銀河系内側に位置し、北半球からの観測(低赤緯方向)では望遠鏡の仰角が低いため、高精度での距離計測が困難とされ、近年のVLBI年周視差計測による銀河系構造の研究においては、ペルセウス渦状腕など太陽系よりも銀河系外側方向(高赤緯方向)にある天体の観測が先行してきた。しかし、いて座渦状腕をはじめとする銀河系内側方向は銀河系の最重要部分であり、その構造と運動を計測することは、銀河系の力学構造を知る上で不可欠である。したがって、これらの領域におけるVLBI年周視差計測の高精度化が求められる。この問題を解決するために、報告者は米国ハーバード・スミソニアン天体物理学センターに滞在し、VLBIによる銀河系構造研究の先駆者であり、世界的第一人者であるMark Reid氏との共同研究を行った。報告者は、これまでのVERAと米国VLBA望遠鏡の解析手法を見直し、シミュレーションと実際の観測データの比較・検証を行うことで、観測データにおいて位置決定精度を最大にする方法(使用仰角の最適値)を求め、これによって最大で約3倍の年周視差計測精度向上を実現した。報告者は、この方法をVERAの観測データに応用し、銀河系いて座腕の星形成領域G14.33-0.64の年周視差による距離を1.12±0.13kpcという高精度で求めた(日本天文学会欧文研究報告(PASJ)に2010年査読論文発表済)。これは、VERA望遠鏡で初めての低赤緯天体の年周視差検出成功である。これまで、いて座腕は太陽系から約2~3kpcの距離と推定されてきたが、報告者の計測により、予想の約半分にあたる1kpcという距離にあることが明らかになった。さらに、報告者は、VLBAを用いて銀河系いて座腕方向の大質量星形成領域W51を含む3天体において、世界的にも非常に高い精度での年周視差計測に成功した(現在、米国The Astrophysical Journalに査読論文投稿中)。報告者らの研究によって、いて座渦状腕の正確な構造が既に見え始めている。今後、本研究を発展させ、観測天体数をさらに増やすことで、銀河系いて座腕構造を解明することが確実に期待される。
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Research Products
(3 results)