2009 Fiscal Year Annual Research Report
他者との相互作用を通じた子どもの知識統合過程の心理学的検討
Project/Area Number |
08J08578
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
橘 春菜 Nagoya University, 大学院・教育発達科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 知識統合過程 / 協同解決 / 他者の役割 / 知識の相互構築 / 問題解決方略 / 説明 |
Research Abstract |
本研究の目的は,他者とのかかわりを通じて子どもはどのように知識を統合して利用するようになるかについて検討することであった。2009年度は以下の成果を得た。1.高校1年生のペアでの数学的問題解決(協同での発見により問題解決を行うタイプの課題)において,知識統合が個人内の変化として促進される過程を検討した。その結果を『教育心理学研究』に投稿し,採択に至った。この研究では,協同解決では単独解決よりも知識統合の個人内変化溺促進されやすいこと,協同場面で複数の要素を関連づけて説明することが事後の個人の知識統合の促進と関連すること,協同後に個人の知識統合が促進されたペアの協同過程には,ペアで相互に知識を構築する協同過程がみられること等が示された。2.中学1年生を対象に協同解決を通じた個人の知識統合について検討した。多様な要因の想起と関連づけによる知識統合を検討するため,日常性があり,多様な要因の関連づけにより地理的事象(地域の変容)のメカニズム(郊外化)を考えうる社会科の課題を扱った。分析の結果,多様な要因を想起するだけでなく,諸要因を関連づける説明が個人の知識統合と関連が強いこと,協同場面で他者の考えに基づき説明を構築する過程が個人の知識統合と関連することが示された。3.高校1年生のペアでの数学的問題解決(他者の説明の妥当性を協同で探究することで理解を深めるタイプの課題)を通じた個人の知識統合について検討した。協同解決時の筆記解答では知識統合の水準の高い説明方略はみられなかったが,発話では水準の高い方略が有意に多くみられた。また,協同解決時に水準の高い説明方略に言及し,それを事後の個人の知識統合にも結びつけた生徒は,そうでない生徒よりも話し合いの場で頻繁にその方略を言い換えて説明すること,本課題でとりあげた分数の加法の概念的意味に関わる疑問をより多く提起することが示唆された。
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Research Products
(3 results)