2010 Fiscal Year Annual Research Report
他者との相互作用を通じた子どもの知識統合過程の心理学的検討
Project/Area Number |
08J08578
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
橘 春菜 名古屋大学, 大学院・教育発達科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 知識統合 / 協同解決 / 他者の役割 / 相互構築 / 問題解決方略 / 説明 |
Research Abstract |
本研究の目的は,他者とのかかわりを通じて子どもはどのように知識を統合して利用するようになるかを検討することであった。2010年度は以下の成果を得た。1.半年間継続的に観察した高校1年生の読解と討論の授業を分析し,授業における個々の生徒の因果的説明の変化を検討した。その結果,(1)因果的説明の量的変化に関して,毎回の授業で因果的説明が平均より多い生徒,授業の中期に因果的説明が多くなる生徒,毎回因果的説明が少ない生徒の3パタンがみられた。(2)因果的説明の質的変化として,テキストの引用に基づく因果的説明が多い段階,既有知識を活用した因果的説明が多い段階,状況に応じてこれらの因果的説明を柔軟に使い分ける段階の順に変化することが示唆された。(3)討論場面の事例的検討により,因果的説明は異なる立場の考えを吟味するために議論の土台を明確にする役割をもつことが示唆された。2.高校1年生のペアでの数学的問題解決において,個人の知識統合の促進には協同解決時のどのような説明過程が関連するかを検討した。生徒の筆記解答と相互作用場面の発話を分析した結果,(1)協同解決を経験した生徒は協同解決を経験していない生徒よりも事後の個別取り組みで知識統合水準の高い説明方略を用いる者が多いことが示された。(2)個人の知識統合の促進には,協同相手の説明内容を吟味し,それに自分の考えを関連づけること,自己説明を精緻にすること,概念の本質的意味を問い返すことが関連することが示唆された。3.子ども(5,7,9歳)が描画で他者に非視覚的情報(重さ)を伝える場面で,伝達意図と描画内容がどのような過程で変化していくかを事例的に検討した。子どもの発話と描画過程の分析より,非意図的に描いた線がプランニングの修正を促し,さらに知識を継時的に統合した伝達表現を活性化することが示唆された。
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Research Products
(3 results)