2008 Fiscal Year Annual Research Report
近世上方歌舞伎音楽史の研究-囃子方の動向にみる周辺地域との交流-
Project/Area Number |
08J08582
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
前島 美保 Tokyo National University of Fine Arts and Music, 大学院・音楽研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 上方 / 歌舞伎 / 囃子方 / 近世 / 長唄 / 番付 / 正本 |
Research Abstract |
本研究は江戸時代中後期(17世紀後半〜18世紀後半)の上方の歌舞伎囃子方に着目し、劇場の出勤状況を明らかにするとともに、周辺地域での演奏機会にも触れることによって、囃子方を通じた演奏空間の広がりとその動態性の特徴を浮かび上がらせることを目的とする。20年度は主に興行関係史料を中心に調査、収集、分析を進めた(調査機関:天理大学附属天理図書館、阪急学園池田文庫、早稲田大学演劇博物館、東京大学総合図書館霞亭文庫、実践女子大学図書館、国立国会図書館他)。まず従来断片的な活用にとどまっていた顔見世番付の悉皆調査を行い、年間の座付き演奏家の出座を把握した。200余点の番付からは、寛延以前に限っても450名を超える囃子方が認められ、京の囃子方の充実が顕著であった。ことに当該前期の上方歌舞伎の囃子方には、芸系のあり方や構成定員、屋号を姓にもつ囃子方の存在など、幕末の上方の囃子方や江戸のそれとは異なる独自の実態を指摘することができる。こうした特徴は上方での歌舞伎音楽の生成過程とその変遷を類推させる根拠の一つとなるものと考えられ、今後さらに分析を重ねていく必要がある。また芝居小屋における長唄呼称の初出に関して既存の見解に再検討の余地かおる可能性も出てきており、次年度の優先課題としたい。以上と並行して、役割番付、絵尽し、長唄の絵表紙正本の調査にも着手した。各興行に即した番付史料に囃子方の記載が乏しい中、盆興行の都風流大踊の中に囃子方の出座を確認できたことは収穫であった(「上方歌舞伎における盆踊-十八世紀都風流大踊の所演状況-」東洋音楽学会第59回大会にて口頭発表、平成20年11月)。絵表紙正本については継続調査中であるが、上方における長唄正本板行の習慣化には、江戸で修業を積んだ後上坂した湖出市十郎との関係性が想定される。今後これら基礎調査から抽出された囃子方出勤情報を集積し、編年資料として再構成する予定である。
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Research Products
(3 results)