2008 Fiscal Year Annual Research Report
大戦間期ポーランド領ルヴフのアヴァンギャルド-枠組み提起と「新しいリアリズム」考
Project/Area Number |
08J08596
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加藤 有子 The University of Tokyo, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | ルヴフ / ガリツィア / アヴァンギャルド / ポーランド文学 / ポーランド美術 / イディッシュ文学 |
Research Abstract |
初年度となる今年は、戦間期ポーランド、ルヴフの前衛的な文学運動と政治的背景について、文学作品と当時の雑誌資料の分析を通して研究した。 1.最左翼であったポーランド未来派のマニフェストやパンフレットのほか、前衛文芸誌を調査し、20年代から30年代の前衛的芸術運動に対するソ連の影響と西欧の影響を量るとともに、第二次大戦勃発までおよそ10年間の文学動向をルヴフ、ポーランド、ヨーロッパの各政治状況に連動したものとして多面的に検討した。 2.独立回復後の「新しい」ポーランド時代における「ヨーロッパ」像と自己意識、「他者」をめぐるディスクールを文学作品、新聞・雑誌を資料に考察した。この際、1920年代後半以降の文学作品における黄禍論の現れに注目したが、これまでは、個別作家研究を越えてこれを文学的現象として捉える視点はほとんど出されていなかった。全体像を示すには更なる調査が必要であるが、現段階での概観を学会、雑誌で発表し、問題を提起することができたと思う。 文学作品のみならず、戦間期の雑誌・新聞を資料に、ポーランドの多民族的状況に関するディスクールと独立回復後の「新しい芸術」観を総合的に考察することで、1930年代のルヴフにおける、民族を超克する文化圏構想の独自性とその汎ポーランド的な部分との区別の見通しがついた。研究資料の性質上、10月から11月にかけてはポーランド、フランスで、未刊行のルヴフの文芸人の資料や定期刊行物の調査・収集を行った。研究成果は随時論文にまとめ、投稿論文・記事、学会で発表している。
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Research Products
(5 results)