2008 Fiscal Year Annual Research Report
反復磁気刺激法によるヒト大脳皮質可塑性機序の解明と治療応用に関する基礎的研究
Project/Area Number |
08J08740
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
濱田 雅 The University of Tokyo, 医学部附属病院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 反復経頭蓋磁気刺激法 / 一次運動野 / シナプス / 可塑性 / メタ可塑性 / ヒト / 運動誘発電位 / 治療 |
Research Abstract |
本研究は反復経頭蓋磁気刺激法(rTMS)の長期効果の発生機序を明らかにし、神経難病の治療効果をより効率的に行うための刺激方法を開発することを目的とした。今年度は従来のrTMSより強力に長期効果を誘発する新しいrTMS法、quadripulse stimulation(QPS)を開発し報告した。具体的には単相性経頭蓋磁気刺激4発を5秒に一回反復して刺激する方法である。4発の刺激間隔に依存して、促通性あるいは抑制性の長期効果を誘発することが可能であり、その持続時間は75分以上であった。QPSは、運動野錐体細胞膜の興奮性指標である運動閾値には影響せず、2発刺激法で評価した運動皮質内抑制性介在ニューロン機能にも変化を与えず、興奮性介在ニューロン機能に変化を誘発した。以上からQPSによりシナプス後電位が変化していることが示唆された。さらに、シナプス可塑性の恒常性維持機構として提唱されているBCM理論に合致する形で、運動皮質可塑性が変化することをプライミング実験により示し、近年注目されているメタ可塑性との類似性を示すことができた。今年度の研究成果としては、まず従来のrTMSよりも持続時間が長く安定した効果を、刺激間隔依存性に誘導することが可能な刺激法を開発したことである。rTMSの治療効果は主として長期効果に由来すると考えられており、本刺激法が強力であることは将来的なrTMSの治療応用にあたり重要な事実である。依然として不明な点が多いrTMSの長期効果の機序について、シナプス可塑性に基づく事、かつシナプス恒常性制御機構も運動野内に存在することを示したことが次に重要な点である。各種神経難病における恒常性制御系の変化について詳細に解析することが可能となり画期的な成果といえる。
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