2008 Fiscal Year Annual Research Report
主体間の意思疎通構造が財の配分に及ぼす影響に関する理論的分析
Project/Area Number |
08J08748
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
近郷 匠 Waseda University, 経済学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 公理的特徴付け / 制度設計 / 特性関数形ゲーム / シャープレイ値 / マッチング問題 / 戦略的操作不可能性 |
Research Abstract |
複数主体間での協調により得られる成果を分け合うという,経済学の基礎的な問題において,「適切な分け方」と「それを実現する方法」の考察を目的とする.本研究ではその際に主体間の意思疎通構造に注目するが,今年度はそのベンチマークとして,主体間の意思疎通構造に制限がない特殊ケースを扱い,「(譲渡可能効用のある)特性関数形ゲーム」と「(多対一)マッチング問題」の二つの異なる問題において上記を別々に考察した,前者は主体間の提携行動とその利得分配を考える問題で,費用分担問題などの応用例がある.後者は二つの異なる集団に属する主体の間でグループを作る問題で,労働者の企業への割り当てなどの応用例がある.ともに経済学的に重要な問題である.具体的には,前者では従来の研究で公平性として言及されてきた「任意の二つの主体間で互いの貢献度が均衡する」という性質を再吟味し,貢献度の定義から全体提携に含まれる主体の人数の影響を除くことで新たな公平性の概念を定式化,それと効率性を用いて「頭割りジャープレイ値」といわれるゲームの解を公理的に特徴付けた.つまりこの問題では「目的」の前者を考察した,後者では各主体の選好を基に割り当てを定めるルールに個人合理性と2-満場一致の尊重という二つの性質を課すと,そのルールが戦略的操作不可能であるためには各主体の持ちうる選好が極めて限定的である必要があることを示した.これは望ましい三つの性質を満たす制度の設計が極めて困難であることを示唆する.各主体がどのような選好をも持ちうる可能性を念頭におくと,戦略的操作不可能性を主体間の外部性に注目してより弱めたものと入れ替えることにより,それらを満たす制度の存在が示せ,上記二つの性質と並立可能な戦略的操作不可能性が示唆される.この問題では「目的」の後者を考察していろ.
|
Research Products
(2 results)