2008 Fiscal Year Annual Research Report
固体表面上における水分子の吸着状態および反応に関する分子レベル解析
Project/Area Number |
08J08759
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
本林 健太 The University of Tokyo, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 走査トンネル顕微鏡 / 水 / 遷移金属表面 |
Research Abstract |
本年度の実験計画にあった、Pt(111)表面上の水分子のアクションスペクトルは測定でき、Pt(111)表面を使った孤立水分子の振動状態の解明のための実験が完了した。当初はPd(111)表面上での各種実験を予定していたが、その実現のためには、使用する分光法に関する解析手法の開発が必要であることが判明したため、本年度はこれを優先した。本研究を支える基盤技術である、走査トンネル顕微鏡(STM)を用いたアクションスペクトルの、解析手法の開発と方法論の確立が本年の主要な成果である。 アクションスペクトルは、表面吸着分子の振動を検出する手法であるが、振動エネルギーを決定する方法が多分に経験的で、アバウトな振動エネルギーの見積もりしかできなかった。そこで、きちんと論理的に裏付けられたスペクトルの解析方法の開発が急務であった。 開発した解析手法は、アクションスペクトルとしてプロットされる反応頻度を定式化し、得られた関数を実験データにフィッティングした際のフィッティングパラメータから、振動エネルギーを含む物理量を見積もる、というものである。反応頻度の定式化は反応速度論的なアプローチを用い、考えうる全ての反応メカニズムに対応できる一般的な形として定式化した。結果、未知のメカニズムによるスペクトルに対してもフィッティングが可能で、さらにその結果から逆にメカニズムの推定も可能となった。これがこの新手法の最大の特色である。 以上で述べた新たな解析手法の主要な成果は、(1)求める振動エネルギーの精度と信頼性が上がる、(2)反応次数などメカニズムに関する情報が得られる、この二つである。どちらも本研究の目的である、金属表面上の水分子クラスターの振動状態、拡散及び解離反応のメカニズムの解明を達成するために必要な要素である。それ以上に、単一分子の化学一般に役立つ画期的なツールを開発できたことが意義深い。
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